愛媛県農林水産部農産園芸課

松野産鹿肉を使った「鹿カレー」試食検討会/えひめジビエが食べられるお店『東京第一ホテル松山』

 ジビエファイル  2018年02月24日

年間通してロースやバラなどに注文が集中しやすい鹿肉。首や肩などの赤身部位の利用促進のため、フードコーディネーターによる「鹿カレー」の提供提案があり、松山市内のホテルで試作が進められています。すでにディナーに県内産のイノシシ肉や鹿肉を使っており、新たにランチメニューでの提供を検討している東京第一ホテル松山の上野統括料理長が、2種類のカレーを試作し、司厨士協会愛媛県本部の会員7名が試食し、意見交換を行いました。

上野シェフは「鹿らしさを出すためにはどうすればよいか」をテーマに、第一次レシピを作成しました。
獣肉のカレーは加工品等でも比較的商品化に取り組みやすく、既存商品も少なくありません。しかし、そのどれもが「ジビエらしさ」で勝負しているかというと、残念ながら難しいと言わざるをえません。

「単純に美味しいカレーを作るなら、ビーフやチキンを使うのが正解。カレーを簡単に美味しくする方法はいくらでもあり、最近市販されているカレーは概ねどれも美味しいものばかり。あえて鹿肉をカレーにするならば、一体どんな要素を求めるのか?」
参加したシェフや女性会員からは、「淡白な鹿に何を足す(プラスする)かが重要」「他の県産品との組み合わせで無理なく独自性を出せたらよい」など、様々な意見が集まりました。

使用部位は首、肩や筋肉の他、精肉の際にトリミングされて出た端肉です。森の息吹では精肉精度が高いため、商品にならない上質な端肉が多く出るためです。
全ての肉はまず赤ワインとミルポワ( ニンジン、セロリ、玉ネギ、エシャロット、ポワロネギ等の香味野菜)に丸一日漬け込み、休ませます。さらに臭みを取るとともに肉を柔らかくほぐすために赤ワインで煮込み、屑肉はそのままカレーのベースになります。一方、首や肩などのブロック肉は別に取り出し、「鹿カツ」となりました。

筋の多い部位とは思えない、とてもジューシーで柔らかい「鹿カツ」は、食べ応えがあり、見た目もジビエカレーとしてインパクト抜群です。普段はカツカレーを食べることが少ない女性会員にも「これならぜひオーダーしたい」と非常に好評でした。また、ルーには小麦粉を一切使わず、炒め玉ねぎをたっぷり加えることで軽い仕上がりにしており、肉の特長を生かすための上品な口当たりも女性受けが良いようでした。

同じく松野町産の鹿肉をメニュー化している道後温泉ふなやの手塚料理長も、「このルーのなめらかさはすごい。肉の存在感とのコントラストがあり、いくらでも食べられる!」と興味深く試食をしていました。一度具材をミキサーすることで、輝くようななめらかなルーに仕上げているとのことでした。

上野料理長によると、もう一つの隠し味が「黄桃」。チャツネ(果実に香辛料・砂糖・酢などを加えてジャム状に煮たもの)の代用として加えてみたとのことで、確かにほのかにフルーティな香りが残る、不思議な味わいでした。「ハワイのカフェで出てくるような華やかなカレーに似ている」という意見もあり、鹿肉と甘味の相性の良さが良く出ていました。もちろんスパイシーな辛さも絶妙で、一回目の試作品で十分な完成度ではないかと感じられました。

ストレートな「鹿らしさ」をカツで表現し、それを引き立てるルーに特長を加えていく、その鍵が「フルーツの甘さ」であるという大まかな方針が見えたことで、改良点が明確となりました。メニュー化へ向けて前進が期待できそうです。