老舗旅館の匠の技が生きる道後ジビエ
↓愛媛県内有名シェフによる県産ジビエ料理を動画でご紹介しています。
道後温泉本館から徒歩3分、創業390年を超える老舗旅館『道後温泉ふなや』では、地元の食材を贅沢に使った和洋の美味が楽しめます。洋食料理長の手塚洋介さんは、この10年ほどは愛媛県産のイノシシ肉、シカ肉を積極的にメニューに取り入れています。
イノシシ肉は主にしまなみ界隈でとれたものを、シカ肉は主に松野町や松山市の高縄地区のものを使っており、狩猟シーズン以外には、それら県内産の獣肉を使った加工品(燻製やハム)なども利用することがあるそうです。
『10年ほど前に、地元でとれたというシカ肉を紹介していただいてから使っています。年々農作物への被害が大きくなっていることは聞いていましたので、商品として扱っていくことで問題解決の一助になればという思いもありました。』
きっかけはハンターからの持込でしたが、実際に料理長はホテルがある道後界隈(自然が残っているエリア)で、夜中にイノシシに遭遇したことがあるそうです。鳥獣被害が決して縁遠い話ではないと感じられたことと思います。
ふなやさんは県外のお客様が多く利用されますので、『四国愛媛県でジビエが食べられるの?』と驚かれることも多く、お味にも大変ご満足いただけているとのこと。ジビエ料理に対する理解も少しずつ広がってきていますから、バリエーションのひとつとして選ばれる、受け入れられている、ということでしょう。観光客の方はどうしても海の幸が豊富な印象を持たれることが多いですから、こうした野山の幸もお楽しみいただけることで、愛媛のいろんな魅力を知って頂くきっかけになっているのではないでしょうか。
経験豊富なシェフにとって、愛媛県産のシカ肉の評価はどうでしょうか。
『空輸に比べて圧倒的に鮮度がいいです。早ければ捕れたものが翌日には手に入るわけですから。』
地元で取れた獣肉は新鮮さはもちろんですが肉質、香りなどの優位性は高いと思いますし、実際松野産のシカ肉は精肉度が高く、臭みもまったくないのでとても使いやすいとのこと。状態の良いものが半身で入ればフォンをとったりもするそうで、経験を活かしたメニューの幅を広げていらっしゃるようです。
『今日は松野産のシカのヒレを使います。届いた肉は火の通りを一定にするために成型して赤ワインで半日ほどマリネします。通常は香り付けや臭みを除く目的で、ハーブや香味野菜などを一緒にマリネすることが多いのですが、今回のように鮮度のよい肉の場合はシンプルに赤ワインのみで下処理して、素材の風味を活かして作ってみようと思います。』
調理する上でのポイントや味付けのコツはあるのでしょうか。
『温度帯、時間などを細かくわけて加熱していくことで、肉が硬くなりません。特にシカ肉は脂肪分が少ないため、他の肉に比べてヘルシーですがやや硬くなりがちです。加熱方法が重要になります。
今日は鴨肉などに使うことの多いソースを応用します。キャラメリゼした砂糖にワインビネガー、赤ワイン、シカでとったフォンを加えてベースを作ります。四国中央市産の大粒のブルーベリーがありますので、これをたっぷり加えます。シカは甘めのソースが良く合います。香ばしく焼けたアーモンドとの相性も良いと思います。』
完成したのは、『松野鹿のポワレ アーモンド風味 新居浜産ブルーベリーのソース秋野菜添え』
まず表面を軽くソテー、それからオーブンで全体を加熱、そしてアーモンド衣をつけてからもう一度火入れをしたため、工程を見ていると相当硬いだろうな、という印象でしたが、驚くほどしっとりとした食感。
サシのある牛肉のような「とろけるような柔らかさ」とは全く異なり、野生肉らしいむっちりとした弾力のある歯ごたえは残しつつ、肉質そのものは本当にきめ細かく、容易に噛切ることができます。シカ独特の森林の靄のような香りと、焼けたアーモンド、濃厚なブルーベリーの香りが一体となっています。
きのこ、むかご、トリュフなど、山々の秋の幸とのバランスもぴったりです。
もう一品は『松野鹿のトゥルト(パイ包み)ソースペリグルディーヌ』。
シカのロースとフォアグラを重ね、ミンチしたシカ肉と城川産の栗ペーストで包み込んだパイ。クラッシクなひとさらではありますが、すっきりとした鹿ロースの味わいが女性好みだと思います。山で食べていたであろう木の実との組み合わせも素敵。ソースにもたっぷりとフォアグラが使われ、言葉を失う美味しさです。
これらのシカ料理は、11月からのジビエシーズン中、コースの一部として提供されています。ジビエは入荷が不定期なため、ご予約の際にご確認ください。
「道後温泉ふなや」
愛媛県松山市道後湯之町1−33
0120-190-278