設立から9年目を迎えたNPO法人森の息吹は、今年2つの大きな変化がありました。まずは農林水産省の「令和3年度鳥獣対策優良活動表彰」において、最高位となる農林水産大臣賞(年間で1組)を受賞したことです。
NPO法人森の息吹は、松野町が抱えてきた深刻な鹿被害を解決するために町内の猟友会さんや地域の農家さん、住民のみなさんが一体となって活動するために設立された組織で、捕獲するだけでなく駆除した獣肉を解体加工処理して販売するところまでワンストップで行う一貫した取り組みが特徴です。
「今回は捕獲鳥獣利活用部門での受賞だったのですが、審査にはうちのお肉の評判やお客さんのリピート率の高さなども加味されたそうで、その点がとても嬉しかったです。」
「まつのジビエ」というブランドに対する責任感が強く、非常に精度の高い精肉技術にこだわる施設長の森下さんにとっては、これまでの努力、そして成果が一つの形となる評価でした。受賞直後からはこれまで以上に全国各地からの視察依頼が増えたそうで、忙しい中でも情報交換の良い機会になっているとのことでした。
もう一つの変化は、森下さんが長年切望していた「直売所」の開設です。
これまで施設内で解体処理した肉は顧客へ発送する以外は、ソーセージなどの加工用として出荷していました。わずかな痛みや不具合も必要以上に念入りに取り除いて精肉にするため、加工用の比率が高くなる上、例えば小さくなってしまったロース等はプロが使う飲食店では使えないため、品質に問題ない部位であってもミンチなどの安価なゾーンに落とさざるを得ない状況でした。
「一般の家庭で使い切ることができるサイズや量を消費者の方に直接販売することができれば、なかなか新鮮なジビエが手に入らないと思っている人にとってはいい窓口になります。これまでネットで調べて買いに来られる方もいたのですが、お断りしながらも、ずっと直売する方法がないかと考えていたんです。燻製の規格外をお得に販売したりもできますし、こちらとしては鹿の命の価値を落とさずにすみますから。」
自身の手で毎日鹿の解体にあたっている森下さんは、傷などで使えない部位に対しても「鹿1頭の命の価値」という言葉を使って大切に向き合っています。
コロナを経てもなお、客先からの需要は多く、まだまだ供給が間に合っていない状況とのこと。県内外の他の処理施設とも協力し合いながら、様々なオーダーに応えています。ただ、そもそも「安定供給を目指さない」というスタンスを変えていません。
「一番大切なのは地域の被害を抑えること。その先にあるジビエに関しては一頭の命の価値をもっと上げていくことで、生産者も飲食店も助かりますし、必要としている消費者にも届けやすくなると思っています。」
NPO法人森の息吹
https://morinoibuki.net/
〒798-2104 愛媛県北宇和郡松野町富岡719
0895-42-1756