愛媛県農林水産部農産園芸課

『高縄ジビエ』松山市八反地

 ジビエファイル  2019年01月27日

県庁所在地松山市に開設された「高縄ジビエ」ではフットワークの良さを活かし、様々なイベントへの出店や繁華街の飲食店への納品を増やしてきました。地元「北条猟友会」を中心とした様々なジャンルの協力者とともに、着実にシェアを広げています。

しまなみイノシシ活用隊でもある渡邊さんは、高縄ジビエの営業部門を担っています。これまで培ってきた県内外のシェフ達との繋がりをさらに広げるべく、配達時には様々な情報交換を欠かしません。
松山市内の人気イタリアンレストラン『パストジータ』の山田シェフは、およそ一年前から様々な県産品を使ったメニューを増やしたいという思いで素材を探していたところ、他の飲食店から渡邊さんを紹介されました。これまで大都市圏で働いていた頃に扱っていたイノシシ肉に比べて、まったく臭みがないことに驚いたといいます。高縄ジビエからは半頭で納入され、全てを同じサイズにカット。煮込んで『イノシシのラグーソースのパスタ』として提供されます。(季節のコース限定メニュー)

「イノシシを使ったことはあるが、特別な思い入れはありませんでした。もちろん美味しい豚肉でも代用できますが、やはり季節感。お店のカラーとして県産素材を使った『季節』を感じられる料理を提供したいと思っています。」
お客様の中には、昔食べた状態の良くないイノシシ肉のイメージから敬遠される方も少なくないそうですが、一度味わうと、驚きとともに、感動をおぼえるとのこと。新たな愛媛らしい料理の一つとして好評を得ているそうです。

1月の晴れた日、鴨猟の取材で熟練猟師の伊原さんを訪ねましたが、搬入されたのは無傷の鹿。ワナではなく山中で仕留めたものだそうで、高縄ジビエでは運営に関わる猟師さんであれば、自家消費用であっても施設内で解体処理することができます。

鴨はこれからが旬。地元の庄地区にある俵原池やゴルフ場の近隣が狩場となりますが、駆除の対象ではありません。しかし、ジビエ食材としては認知度も高く、地元の飲食店などには提供されており、鮮度の良さで既存品との差別化を狙います。

食肉処理担当の豊島さんによると、夏の豪雨の影響はイノシシの捕獲頭数には大きく影響しておらず、個体の状態も悪くないと言います。通常、脂が乗り始めるのは12月以降ですが、秋口ですでに太りの良いものが獲れていたそうです。
「豪雨で玉川へ向かう山沿いのキウイ畑や柑橘畑が流されました。新たな餌場へ移動したことで、よく熟れた果実にありつく場面が増えたのかもしれません。タヌキやアナグマなどがうっかりイノシシ用のワナにかかることもあります。小動物用の箱ワナをわざわざ仕掛けることはありませんが、サルもかかります。」

毛皮を綺麗に処理し、イベントなどで展示したり、角や蹄などでクラフト品を作るなど、未利用部位の活用も積極的に模索しています。

立地のよさと獣種の豊富さ、地元猟師との密な連携を活かし、順調な成長を続ける高縄ジビエ。ジビエは既存産業のように、システムを構築したとたんに大手が参入して広がるという展開は難しく、地道に地域と関わりながら仕組みを積み上げていくことで成熟していくのが産業としてのジビエの醍醐味かもしれないと、感じさせられます。