愛媛県農林水産部農産園芸課

えひめ地域鳥獣管理専門員の活動③/山橋かおりさん

 ジビエファイル  2019年12月27日

えひめ地域鳥獣管理専門員/山橋かおりさん(愛媛県東予地方局地域農業育成室四国中央農業指導班)

山橋さんは普及指導員として女性農業者の育成や6次産業化支援業務の他、現地へ赴いて鳥獣害対策の指導や新技術の実証を行っています。実務に狩猟免許は必須ではありませんが、周囲の期待と自宅の近辺でもイノシシの被害が見られるようになったことで、12月に免許取得。勉強したことが即役立ち、活動の幅も広がったといいます。

四国中央農業指導班のメンバーは7名しかいないため、一人では危険な場所や困難な事案であったりしても、要請に応じて出動することがあります。しかし、地域やケースによっては鳥獣管理専門員である四国中央市役所の三好さんと同行し、連携しながら対応しているとのこと。

この日は、四国中央市天満地区で5代にわたり柑橘栽培を続けている寺尾果樹園の園地へ、わなの移設補助に訪れました。
多品種を誇る愛媛の柑橘シーズンは一年の3分の2以上と長く、鳥獣にとっては安定して食糧に恵まれている状況。この地区で警戒すべきサルは、その場で果実を食べたり樹を傷めたりするイノシシと違い、収穫した果実を食べながら移動したり、別の場所へ運んでから食べるなど、その残骸などから移動経路や行動パターンが読み取りできるといいます。

「現場の形跡とカメラの映像を照らし合わせることで、動きや群れの大きさを把握してより的確な設置場所を選定することができます。こうしたこまめなチェックや移設ができる農家さんだと助かります。」
この地は比較的若い後継者も多く、ICT導入にあわせて免許取得者も増えてきているそう。世代間の協力体制もあり、他の地域に比べると意識の共有も進んでいるのだとか。こうした「頑張る人達」が力を合わせて被害に立ち向かうことで、より効果的な防除につながってくると言えます。

寺尾果樹園の寺尾奏周さんは平成29年に狩猟免許を取得。増加し続ける鳥獣被害を前にしても、自然の中で仕事を続けていくために環境の変化にどう対応していくべきなのか頭を悩ませているといいます。
「廃園(耕作放棄)になるとどうしても被害が集中し、そこから近隣の管理された園地へと被害が拡大します。正直、積極的に捕獲したいという気持ちがあるわけではないのですが、山橋さんたちのアドバイスをうけながら、守れるところをしっかり守っていくことが重要かなと思っています。」

鳥獣管理専門員2名が連携できる愛媛唯一の地域であることについては、「県の人と市の人にお願いすることはそれぞれ別のことが多いのですが、両者が連携してもらえることでスピードも出ます。集落としてはとても助かっているので、できれば継続してサポートして欲しいと思います。」

山橋さんは鳥獣管理専門員としての課題について、「鳥獣害の問題は農作物中心で考えられることが多いのですが、もはや農家以外の住民の普段の生活環境を脅かすところまできています。今、山で起こっていることは、すぐに住宅地でも起こります。これまでの私たちの仕事は果樹の指導、野菜の指導というように専門が分かれていましたが、私たちは最低限の知識として鳥獣害にどう対応するかをわかっていなければならない時期に来たと感じています。県として責任ある情報提供をこまめに続けていかなければなりませんし、市と連携することによって、さらにきめ細かい手当てを考えていかなければならないと感じています。」と熱く語ってくれました。

県下でもサルの被害額が大きいといわれる四国中央市や、近隣の市では、明確な鳥獣害対策を講じる専門課や専門係が設立されています。今後はそれらの組織がいかに機能し、県とも連携しながら被害の食い止めに繋げていけるのかが重要になる、と締めくくっていただきました。