えひめ地域鳥獣管理専門員/山之内泉さん(愛媛県今治支局地域農業育成室)
普及指導員として青年農業者協議会や農業女子の活動サポートに加え、今治市の陸地部を中心とした鳥獣害対策全般を平成29年度から担当している山之内さん。今治市大西町においては「鳥獣害を受けにくい集落づくり」の推進に力を入れてきました。
今治市の平成30年度の被害額は約4,300万円。その6割がイノシシによる被害。協力農家さんとセンサーカメラによるイノシシ等の出没情報を共有し、箱わなの移設や給餌方法を変えるなど、鳥獣管理専門員として学んだ知識を活用しながら捕獲強化のための検討を続けています。
近年は今治市玉川町におけるニホンザル被害も深刻化してきており、さまざまな手段で被害状況や出没状況を調査中です。特に原木しいたけの食害がひどく、軸だけをかじったりハウスのビニールを破ったりと看過できない事態です。地元農業者と一緒に大型捕獲檻の導入などを検討中です。また、地元農業者を対象にセンサーカメラの映像をもとにしたセミナーや、わな設置、電殺機作りの講習会などのこまめな活動を行っています。山之内さんは「まずはきちんと情報提供し、地域全体で捕獲活動に取り組める体制づくりとリーダーを育成することが重要」だと考えています。
現職の前は県庁内で野菜や花きを担当、またその前は西予で青年農業者の育成に携わるなど、行政や普及指導員としての業務に邁進してきた山之内さんは、それぞれの農業者団体のリーダーと関わる機会が多かったと言います。
「過疎や高齢化でそれまでのグループの仕事や活動が維持できないという声はどの地域からもあがりますが、リーダーとなる人の意識ひとつでその流れは少しづつ変わってきます。組織全体のムードが変わるようリーダーへ働きかける役割を果たしたい。」
そこに暮らす人々の意識改革のノウハウが鳥獣害を受けにくい集落づくりに役立つといえます。
今夏は大西町社会福祉協議会主催の小学生を対象とした「ふるさとクッキング」で柑橘を使った郷土料理の他に、イノシシ肉を使った「ジビエ団子」を紹介。研修に先駆けて子供たちにセンサーカメラの映像を見せながら鳥獣害の現状や対策をわかりやすく説明し、食育推進を行いました。経験と実績を活かし、幅広い世代へ「鳥獣が近寄らない環境づくりの重要性」の啓発をしています。
「これまで青年や女性農業者の担当をしながら間接的に鳥獣害対策には関わっていましたが、3年前、今治支局に着任した頃は専門的な知識がありませんでした。集落づくりの課題という点では問題は共通しており、技術はなくてもリーダーの意識改革という面で貢献できたと思いますが、現場に出てみて自分に不足している部分がよくわかりました。その上で鳥獣管理専門員のカリキュラムを受講できたことはタイミングに恵まれていましたし、今後も経験を積んで、鳥獣害に関わる仕事を続けていきたい。」と語ります。
今年度、鳥獣管理専門員のカリキュラムを今治地区からはJA職員が受講しているとのこと。「これまでの情報提供や提案にとどまらず、農業者にとってはよりきめ細かく具体的な対策が期待され、地域・JA職員との連携をより密にしながら、安心できる集落づくりをサポートしていきたい」と力強く語っていただきました。