えひめ獣肉加工品開発ものがたり[猪スモーク] | えひめジビエファイル えひめのジビエを知りつくす食べつくすサイト

愛媛県農林水産部農産園芸課

えひめ獣肉加工品開発ものがたり[猪スモーク]

 ジビエファイル  2017年10月25日

「無添加」に挑む。驚きの繊細な猪ハムここに誕生!

 


愛媛県では、野生鳥獣による農作物への被害拡大にともない鳥獣害対策の一環として、県産獣肉の消費拡大及び県内処理施設の運営支援に取り組んでいます。2016年からスタートした愛媛県の獣肉加工品開発プロジェクトの中で、「しまなみイノシシ活用隊」ではイノシシの下級部位であるモモ、赤身肉を燻製にする試みを始めました。

獣肉らしい歯ごたえや旨味が楽しめるよう、お酒のおつまみなどを想定した「燻製らしい燻製」を作ったところ、かなり味が濃く、一般消費者が持つ「ジビエ加工品」のイメージからは大きく外れない商品として完成しました。しかしながら販路拡大のために飲食店の意見を聞いたところ「塩が濃く、すでに完成されているため料理としては特色が出せない」という声が一部のシェフから上がりました。

そこで、各飲食店やシェフのイメージに合った味付けで、料理としても提供できる業務向けのイノシシ加工品「燻製」を開発することになりました。
精肉の取引のある「道後温泉ふなや」の手塚料理長からは、前菜で使うならばできるだけ塩度を抑え、ハーブなどの香りが活きたスモークが望ましいという意見がありました。またその他、松山市内のレストランからもアドバイスや要望を聞き取り、商品のコンセプトが固まってきました。

県によるマッチングで出会ったのは「からり燻製工房」の山口佳一さんでした。もともと畜産農家だった山口さんはソーセージの本場、ドイツのローテンブルグの精肉店でハム、ソーセージ作りを学んだ専門家です。内子フレッシュパークからりでは、地元の無菌豚などを使ったオリジナルのハム、ソーセージの開発などを担当しており、しまなみイノシシ活用隊の渡邉さんの思いに大いに共感。初対面で意気投合した二人は「添加物を極力使わないイノシシハムを作る」というゴールを目指すことになりました。山口さんはこれまで同様、できる限り手間を惜しまず、少量の試作を何度も繰り返して開発を進めていきました。

愛媛らしさを出すために「みかん果汁」を加えた商品が完成し、2017年8月に開催された「松山BEERフェスタ」で出品することになりました。しかしながら、何度も試作を繰り返したものの、山口さんとしては納得の行く仕上がりではなかったため、当日は焼いたものに香辛料を加えて試験的に販売することにしました。イノシシの燻製は珍しく、ビールと好相性なため概ね好評ではありましたが、二人が求めているイノシシハムではありませんでした。

その後、内子の燻製工房では山口さんによる更なる開発が進められ、数種類の内子産の香辛料を使用した独自のブレンドで味を配合し、商品が完成しました。山口さんのこれまでの経験の中でもかなり満足いくものに仕上がりました。使っている原料は「にんにく」「はちみつ」「水」「岩塩」「セロリ」「パセリ」「玉ねぎ」「タイム」に、色づけのためのごくわずかな「亜硝酸ナトリウム」と、限りなく無添加に近い商品が出来上がりました。

特にこだわったのは、これまでの商品とは違う燻製方法。通常はごく近くで当てることの多い煙霧を、極力遠ざけていぶし、じっくりと低温を保つことで、「燻製くさくない」フレッシュな味わいに仕上がりました。また当初のシェフからの要望通り、極力塩分を下げることにも挑戦しました。ハムとしての保存性は少し下がりますが、イノシシ本来の肉の味を残しながら、獣くささを感じないギリギリのせめぎ合いを制した形となりました。

スパイスを肉に注入した後、真空状態にして、肉全体を「揉む」という特殊な機械を使った肉の熟成方法も、ハム造りを極めた山口さんのこだわりから生まれたもの。長年の経験と勘、渡邉さんの熱意が重なって実を結んだ、非常に貴重なハムとなりました。11月18,19日と開催された愛媛産業文化まつりにおいて、この新バージョンのイノシシスモークを提供したところ、「ブロックごと購入したい」といった嬉しい声も聞かれ、山口さんんも渡邉さんも十分な手ごたえを感じています。

道後産のイノシシを使った、「燻製らしくない燻製」は火を入れないで切ってそのまま味わうのがおススメです。市販のハム特有の風味はなく、野性味ある肉の旨味とほのかなハーブの香りが口全体に広がり、爽快な食べ応えです。今後は松山産の鹿肉を使った商品も開発を進める予定で益々期待が高まります。