愛媛県農林水産部農産園芸課

『シシ活場しまなみイノシシ活用隊』今治市大三島町

 ジビエファイル  2018年11月22日

大三島の柑橘産業に大きな被害をもたらしているイノシシ害ですが、今年は大雨による甚大な被害が重なりました。ため池の決壊や土石流による農道の流失など、この地域では農業環境そのものを維持することが困難な状況が多く見られます。おかげで泥浴を好むイノシシにとっては最適な沼田場が増えることとなり、災害による獣被害は減ることはなかったそうです。

この日は100kgを超える状態の良い個体が搬入され、解体担当の高橋さんによって手早く処理されました。
渡邉さんによると「処理頭数そのものは横ばいです。販売可能量と処理人員のバランス、あとは冷凍庫が足りなくなるなどの理由で、夏場のピーク時には引き受けをお断りすることもありました。」とのこと。

2018年4月にオープンした「猪骨ラーメン」は、イノシシ活用隊が解体した食肉と猪骨を利用しています。店主の吉井さんは地域おこし協力隊として大三島に移住し、活用隊の一員として狩猟、解体処理に携わる中で、未利用だった猪骨を使ったラーメンの開発に着手しました。自らの手で解体しながら約3年をかけて商品化に成功し、実店舗のオープンを果たしました。

観光地(大山祇神社)が目の前という立地もあって週末は多忙を極め、通販用の加工品の製造もあることから、現在は解体からは離れているという吉井さん。同様に地域おこし協力隊を経て猪レザーの工房「ジシャク」を立ち上げた重信さんも、皮革事業が本格化したことから活用隊の解体業務からは離れています。

人員は減ることとなりましたが「今後もこういう形で次々と事業が生まれていくことが活用隊としての目標」という渡邉さん。現状、解体にあたる人員は熟練の猟師でもある高橋さん、営業活動の補佐も務める梶原さん、新たにメンバーとなった高室さんの3名で、自身は食肉の営業活動をしながら新規開業するジビエ料理カフェを軌道に乗せることに注力するとのことです。
「僕の営業の仕事も少しずつメンバーに移行していけば、また何か新しい仕事を作ることができます。人を次々と育てながら、大三島のイノシシを使った事業も育っていけばベスト」

高室航さんは愛知県立大学外国語学部を休学中の22歳。この4月から大三島に移住し、しまなみイノシシ活用隊の一員として生活をしています。伊東建築塾が運営する「大三島みんなのワイナリー」に参加したことが自然や農業に触れるきっかけとなり、その後東北で2ヶ月ほどインターンとして農家の取材をする中で初めて「獣害」について知ることになったと言います。

「深刻な獣害は全国にありますが、ただ駆除するだけでなく事業として成立させているところは少ない。その問題に気づいた時、大三島で出会った渡邉さんのことを思い出したんです。」

ビジネスとしてジビエに関わりたいと相談すると、ちょうど活用隊もジビエに特化した人材募集をしていたタイミングだったことで、すぐに高室さんを受け入れ、そのまま解体や発送業務などにあたってもらうことになったのです。最初の止め刺しはさすがに少し動揺したそうですが、徐々に慣れ、細かなポイントや部位の見極めなどについては、先輩たちと一緒に考えながら習得していく日々だそう。

「大三島は僕にとっては暮らしやすい場所です。都市住民としてのベースがあり、食べ物や暮らし方へのモヤモヤを抱えた学生としては、いい意味で“ゆるく”社会人経験ができることは良かったです。仕事のやり方や収入は『イノシシ任せ』ではありますが、リモートワークはもちろん、ラーメン屋さんのバイトやみかんの収穫の手伝いなど、やることはいろいろあるんですよ。」

愛媛大学農学部への編入が決まれば、さらにビジエについての勉強を深めることができるといい、将来的には着地型観光をメインにした地方ならではの事業構築を模索しているとのこと。渡邉さんの考える「大三島のイノシシを使った新しい仕事」の形が、無限に広がっていく予感がします。