『シシ活場しまなみイノシシ活用隊』今治市大三島町 | えひめジビエファイル えひめのジビエを知りつくす食べつくすサイト

愛媛県農林水産部農産園芸課

『シシ活場しまなみイノシシ活用隊』今治市大三島町

 ジビエファイル  2017年10月24日

日本一の称号を持つ愛媛ジビエのパイオニア


※本文中に害獣の解体作業に関わる画像、映像がありますのでご注意下さい。
↓処理施設の解体技術とこだわりを動画でご紹介しています。

廃校となって以来利用されていなかった旧大三島町学校給食センターを、駆除したイノシシを解体処理する施設として運営しはじめたのが2010年の11月。立ち上げたのは大三島の柑橘農家の後継者だった渡邉さんと、地元の農家や猟友会のメンバー13名でした。

「しまなみイノシシ活用隊」代表の渡邉秀典さんによると、もともと大三島にイノシシは1頭もいなかったとのこと。環境の変化からなのか、対岸から糧を求めて泳いで渡ってきたといわれています。島民となったイノシシたちが、大三島の豊かな柑橘やその他の農作物に与える被害は甚大で、年々大きな問題となっていました。そこで、ただ害獣を駆除するだけで終わらず資源として活用することで、問題に直面する当事者たちに還元される仕組みをつくろうと考えたことがこの処理施設設立のきっかけでした。

具体的には食肉として流通させるための施設運営を始めるため、地元の学校給食センターの設備を利用することにしましたが、当然ながら解体に関わる特殊な技術や衛生規範等への注力が不可欠だったはずです。現在は移住者らを含めてメンバーは15名となり、そのうち食肉加工処理にあたるのは5~6名。年間の有効処理頭数は年々増加し、約200頭を捌くことはかなりハードな作業となります。

この施設のこだわりは「鮮度のよさ」と「出荷形態の多様性」です。

まず近隣の猟師がわな等で捕らえた害獣を仕留め、すぐに血抜きしたものをほぼ30分以内に受け入れて処理しています。状態を確認した後、直ちに冷水のプールに浸ける「水冷」処理により体温を下げて肉質の低下を抑えています。また旬の時期の状態の良いものは熱湯をかけて被毛を抜く「湯引き」を行い、皮付きのままでの解体出荷を行う場合もあります。
いずれも島内での連携が密に取れており、鮮度重視でメンバーが動ける体制が強みといえます。

状態、鮮度の良いものは冷凍せず、チルドのまま出荷を行っています。事前に注文を受けているものはすぐにシェフに連絡をし、即日出荷しています。イノシシは個体差が大きいため、解体した肉をスマートフォンで撮影し、シェフに送信。リアルタイムで要不要のレスポンスをもらえるといいます。
また注文がなくてもどういう個体が使いやすいかという、各お店ごとのニーズを把握しているため、条件にあう個体が入ればシェフに画像を送っておすすめし、納入にいたることも。常に取引先と連絡を密に取り合い、チャンスを逃さない姿勢も、若手メンバーが多いゆえかもしれません。

また、これも取引先とのコミュニケーションが不可欠ですが、部位ごとの出荷の他、半身のままでの出荷も行うなど、様々な出荷形態をとっている点も特長です。毛を抜いただけの皮付きや骨付きであれば、解体処理のコストがかなり抑えられますし、飲食店では骨やさまざまな部位を無駄なく使えるため、料理のバリエーションが増えます。顧客のニーズに合わせてきた結果、解体のバリエーションが増えたこともこだわりといえます。

季節や雌雄による個体の差はありますが、解体においては筋肉のつき方や関節の向きなど、条件をひとつづつクリアしていくことで安全に無駄なく作業ができるといいます。皮剥ぎは、全体の状態を確かめながら脂を取りすぎないように手早く作業することが必要で、特に内臓の状態確認や、ワナや止め刺しによる肉の損傷をしっかりと見極めています。食肉として流通できるかどうか、ガイドラインにしたがって適切にチェックを行っている点は高く評価できます。

開設以来、それぞれに活躍する活用隊のメンバーによってしまなみイノシシの可能性が広がっています。皮を加工したイノシシ革小物の工房を営む重信さんは「Jishac(ジシャク)」というブランドを立ち上げ、ハンドメイドの財布やキーケース、ファーストシューズなどを手がけています。同じくメンバーの吉井さんは骨を利用したラーメンの開発を行っており、「猪骨(シシコツ)ラーメン」として島内にお店をオープンさせる予定で、これまで目標としてきた「食肉流通」とは違った展開が期待できます。島が抱える問題を、被害を受けている島民自身はもちろん、地域おこし協力隊など島の外から移住してきた新しいメンバーが共に解決にあたっている点は大きな強みです。活用隊にはまだまだ自分達が気づいていない可能性があるといえます。